第57回(2024年)「おかねの作文」コンクール 入賞作品

入賞作品のうち一部をご紹介しています。本年は、全国の中学校から5,312点の応募が寄せられ、審査の結果20点が入賞作品に選ばれました(特選5点、秀作5点、佳作10点)。

特選入賞者(敬称略) 

「祖母の夢」から始まるストーリー

飯原 愛理(茨城県 茨城県立土浦第一高等学校附属中学校 1年)

「株式」を通して

中村 有里(富山県 片山学園中学校 3年)

私の推し活

江口 琉那(佐賀県 佐賀大学教育学部附属中学校 1年)

お金の価値

池上 由麻(兵庫県 加古川市立氷丘中学校 2年)

お金の本当の意味とは

江口 寛冬(東京都 成城中学校 3年)

秀作入賞者(敬称略) 

どう使うかでお金は変わる

鈴木 志野(埼玉県 富士見市立東中学校 1年)

『お金を稼ぐ』ということは

大村 瑠袈(静岡県 静岡市立蒲原中学校 1年) 

あたたかいお金

王 右伊(千葉県 専修大学松戸中学校 3年) 

ただあるだけのお金

王 雨溪(大阪府 大阪教育大学附属池田中学校 3年) 

お金から学ぶ「自分と社会の関係」

澤野 美菜(大阪府 大阪教育大学附属池田中学校 3年) 

佳作入賞者(敬称略)

佳作入賞者一覧(10名)(PDF65KB)

審査員(敬称略) 

野村 泰蔵金融庁総合政策局総合政策課
金融経済教育推進室課長補佐
藤野 敦文部科学省初等中等教育局視学官
太田 敬介公益社団法人日本PTA全国協議会会長
中嶋 富美代全日本中学校国語教育研究協議会会長
髙橋 桂子実践女子大学生活科学部教授
石本 貞衡葛飾区立堀切中学校主幹教諭
森下 謙太郎日本銀行情報サービス局総務課長
大友 佳子金融経済教育推進機構理事
講評
第57回「おかねの作文」コンクールには、5,312編の作品が寄せられました。テーマは、おかねに関することであれば自由です。厳正な審査の結果、特選5編、秀作5編、佳作10編の入賞作品が決まりました。

株式投資など社会の中で動くお金や経済の仕組みをテーマにしたもの、家族との会話の中で気づいたお金に込められた思いを描いたものなど、自分自身の体験を通してお金の使い方や価値について考察した作品が多く寄せられました。特選5編の概要を紹介します。

金融担当大臣賞「『祖母の夢』から始まるストーリー」は、「娘と孫と一緒にルーブル美術館を訪れる」という祖母の希望を実現するため、筆者が努力を重ねる物語です。小学1年生だった筆者は祖母の夢を知り、旅行費用を貯めてプレゼントする長期計画をスタートさせます。お年玉やお小遣いを貯金するだけでなく、中学生になって初めての夏休みには、母に家庭内アルバイトを提案。洗濯や掃除などの手伝いで収入を増やす工夫をして、コツコツと資金を増やしていきます。筆者は、女3人フランス旅という目標に向けて行動する中で、お金を「使う」のではなく「貯める」ことで得られる幸福があることを実感。さらに、旅の計画を通じて英語やフランス語への学習意欲も高まります。「計画成功を目指して、家庭内アルバイトに勉強にと、メリハリのある毎日を楽しみながら過ごしたい」と近い将来への希望と努力に満ちた決意で結びます。審査員からは「祖母の夢を実現するために行動を起こし、そこから学びを得ていく経験が非常に素晴らしい。誰かのためにお金を貯める喜びがうまく表現されている」と評価されました。

文部科学大臣賞「『株式』を通して」の筆者は、授業の株式学習ゲームで、仮想の1,000万円を元手に「学年で一番お金増やそう」と目標を立て班員と投資を試みます。最初の2週間は株価が上昇し喜んでいましたが、選んだ株が急落、約300万円を失い最下位に終わります。二度と株はやりたくないと思っていましたが、夏休みに母から「株をやってみない?」と提案され、前回の悔しい思いをバネに株について勉強しようと決意。本を買ったり、ニュースや四季報を参考にしたりしながら3銘柄を実際に購入しました。3週間後、投資したお金は5万円増加。途中で株価の上下に直面しても、ニュースを見て理由を理解できていたから焦りや不安はなかったといいます。これらの経験を通じて、ニュースの重要性や失敗を糧に行動する姿勢、そしてお金の重みを学んだ筆者は、「教訓を活かして、さまざまなことにチャレンジしていきたい」と決意を述べます。審査員からは「授業で学んだことやそこから得た視点や考え方を、実際の体験にしっかり生かせている。他の中学生にも読んでもらいたい学びのプロセスがある」と評価されました。

日本銀行総裁賞「私の推し活」は、筆者が株式投資に挑戦した体験をつづっています。株はギャンブルや宝くじのようなものと考えていた筆者ですが、授業をきっかけに株に興味を持ち、5冊の本を読んで基礎知識を習得。母に、自分の好きなジュースを作っている会社の株を1株買ってもらい、株価変動を見ることが楽しみとなります。ある日、その会社の株価が急上昇した理由を探るうち、会社が発表する製品やサービス、業績だけでなく、国内外のさまざまなニュースが株価に影響を与える可能性があることを知り、「自分が選んだ株が遠い国とつながっているかもしれないと思うと、世界が広がった気がしてわくわくした」と感動します。筆者は、株を買うことが企業の商品開発や設備投資を後押しし、それが企業の業績向上や株価上昇につながるという循環を学びます。最後に、投資は社会を良くするお金の使い方であり、日本経済を元気にする「推し活」であると結んでいます。審査員からは「中学生の視点から投資や株の意義をわかりやすくまとめている。企業への投資が日本経済を元気づけるところまで見据えた点がとてもよかった」と評価されました。

日本PTA全国協議会会長賞「お金の価値」の筆者は10歳の頃、周囲の友人の影響で、誕生日プレゼントは物ではなく現金が欲しいと思い始めます。祖母に、いつものように一緒にプレゼントを買いに行こうと提案されますが、祖母と出かけることへの恥ずかしさも重なり、「将来のために貯めたい」「習い事で忙しい」と嘘をつき断ってしまいます。誕生日当日、祖母から心のこもった手紙と新札の現金を受け取った筆者は、そこから「お金をあげるだけでなく、孫と楽しく過ごしたい」という思いを感じ取ります。自分の行動を後悔した筆者は、すぐに祖母へ謝罪の言葉を伝え、一緒に買い物に行く約束をしました。筆者はこの経験を通し、お金では買えない、それ以上に価値があるものが存在すると実感、お金に込められた思いや価値を感じる大切さを学びました。周りの人のためにお金を使い、人の心を晴れやかにしようとする祖母の姿勢を見習い、今後は「何円であっても大切に使うことを心がけたい」と誓います。審査員からは「中学生らしい率直な思いや、お金というものに向き合った心情がよく描かれていて胸を打った」と評価されました。

J-FLEC理事長賞「お金の本当の意味とは」では、海外での体験を通じた筆者の価値観の変化が描かれています。お金は物を手に入れるための道具であり、労働の対価という単純なものと考えていた筆者。夏休みに滞在したイギリスで、世界中から集まった仲間と寮で共同生活を送り、異なる文化やお金への価値観を目の当たりにします。円安の影響もあり、現地でお金の使い方の見直しを迫られますが、限られた予算で食事を工夫したり、公園でのピクニックといった安価な楽しみ方を見つけたりする中で、「お金は物欲を満たすための道具だけでなく、経験や思い出を得る手段である」と実感します。帰国後、自分とは異なるお金への価値観に触れ、お金への考え方は人によってさまざまで多面的であると気づきます。筆者は「お金は自分を成長させる羅針盤」と捉え、「人との繋がりを深めたり、自分を成長させたりする大切なツールとして、よりよい使い方を模索していきたい」と決意します。審査員は「イギリスでの体験で得たお金についての学びと、それによる意識の変容が中学生らしい視点で示されている。今後の自分の生き方にも触れており、全体の流れが素晴らしい」と評価しました。
第57回「おかねの作文」コンクールには、5,312編の作品が寄せられました。テーマは、おかねに関することであれば自由です。厳正な審査の結果、特選5編、秀作5編、佳作10編の入賞作品が決まりました。

株式投資など社会の中で動くお金や経済の仕組みをテーマにしたもの、家族との会話の中で気づいたお金に込められた思いを描いたものなど、自分自身の体験を通してお金の使い方や価値について考察した作品が多く寄せられました。特選5編の概要を紹介します。

金融担当大臣賞「『祖母の夢』から始まるストーリー」は、「娘と孫と一緒にルーブル美術館を訪れる」という祖母の希望を実現するため、筆者が努力を重ねる物語です。小学1年生だった筆者は祖母の夢を知り、旅行費用を貯めてプレゼントする長期計画をスタートさせます。お年玉やお小遣いを貯金するだけでなく、中学生になって初めての夏休みには、母に家庭内アルバイトを提案。洗濯や掃除などの手伝いで収入を増やす工夫をして、コツコツと資金を増やしていきます。筆者は、女3人フランス旅という目標に向けて行動する中で、お金を「使う」のではなく「貯める」ことで得られる幸福があることを実感。さらに、旅の計画を通じて英語やフランス語への学習意欲も高まります。「計画成功を目指して、家庭内アルバイトに勉強にと、メリハリのある毎日を楽しみながら過ごしたい」と近い将来への希望と努力に満ちた決意で結びます。審査員からは「祖母の夢を実現するために行動を起こし、そこから学びを得ていく経験が非常に素晴らしい。誰かのためにお金を貯める喜びがうまく表現されている」と評価されました。

文部科学大臣賞「『株式』を通して」の筆者は、授業の株式学習ゲームで、仮想の1,000万円を元手に「学年で一番お金増やそう」と目標を立て班員と投資を試みます。最初の2週間は株価が上昇し喜んでいましたが、選んだ株が急落、約300万円を失い最下位に終わります。二度と株はやりたくないと思っていましたが、夏休みに母から「株をやってみない?」と提案され、前回の悔しい思いをバネに株について勉強しようと決意。本を買ったり、ニュースや四季報を参考にしたりしながら3銘柄を実際に購入しました。3週間後、投資したお金は5万円増加。途中で株価の上下に直面しても、ニュースを見て理由を理解できていたから焦りや不安はなかったといいます。これらの経験を通じて、ニュースの重要性や失敗を糧に行動する姿勢、そしてお金の重みを学んだ筆者は、「教訓を活かして、さまざまなことにチャレンジしていきたい」と決意を述べます。審査員からは「授業で学んだことやそこから得た視点や考え方を、実際の体験にしっかり生かせている。他の中学生にも読んでもらいたい学びのプロセスがある」と評価されました。

日本銀行総裁賞「私の推し活」は、筆者が株式投資に挑戦した体験をつづっています。株はギャンブルや宝くじのようなものと考えていた筆者ですが、授業をきっかけに株に興味を持ち、5冊の本を読んで基礎知識を習得。母に、自分の好きなジュースを作っている会社の株を1株買ってもらい、株価変動を見ることが楽しみとなります。ある日、その会社の株価が急上昇した理由を探るうち、会社が発表する製品やサービス、業績だけでなく、国内外のさまざまなニュースが株価に影響を与える可能性があることを知り、「自分が選んだ株が遠い国とつながっているかもしれないと思うと、世界が広がった気がしてわくわくした」と感動します。筆者は、株を買うことが企業の商品開発や設備投資を後押しし、それが企業の業績向上や株価上昇につながるという循環を学びます。最後に、投資は社会を良くするお金の使い方であり、日本経済を元気にする「推し活」であると結んでいます。審査員からは「中学生の視点から投資や株の意義をわかりやすくまとめている。企業への投資が日本経済を元気づけるところまで見据えた点がとてもよかった」と評価されました。

日本PTA全国協議会会長賞「お金の価値」の筆者は10歳の頃、周囲の友人の影響で、誕生日プレゼントは物ではなく現金が欲しいと思い始めます。祖母に、いつものように一緒にプレゼントを買いに行こうと提案されますが、祖母と出かけることへの恥ずかしさも重なり、「将来のために貯めたい」「習い事で忙しい」と嘘をつき断ってしまいます。誕生日当日、祖母から心のこもった手紙と新札の現金を受け取った筆者は、そこから「お金をあげるだけでなく、孫と楽しく過ごしたい」という思いを感じ取ります。自分の行動を後悔した筆者は、すぐに祖母へ謝罪の言葉を伝え、一緒に買い物に行く約束をしました。筆者はこの経験を通し、お金では買えない、それ以上に価値があるものが存在すると実感、お金に込められた思いや価値を感じる大切さを学びました。周りの人のためにお金を使い、人の心を晴れやかにしようとする祖母の姿勢を見習い、今後は「何円であっても大切に使うことを心がけたい」と誓います。審査員からは「中学生らしい率直な思いや、お金というものに向き合った心情がよく描かれていて胸を打った」と評価されました。

J-FLEC理事長賞「お金の本当の意味とは」では、海外での体験を通じた筆者の価値観の変化が描かれています。お金は物を手に入れるための道具であり、労働の対価という単純なものと考えていた筆者。夏休みに滞在したイギリスで、世界中から集まった仲間と寮で共同生活を送り、異なる文化やお金への価値観を目の当たりにします。円安の影響もあり、現地でお金の使い方の見直しを迫られますが、限られた予算で食事を工夫したり、公園でのピクニックといった安価な楽しみ方を見つけたりする中で、「お金は物欲を満たすための道具だけでなく、経験や思い出を得る手段である」と実感します。帰国後、自分とは異なるお金への価値観に触れ、お金への考え方は人によってさまざまで多面的であると気づきます。筆者は「お金は自分を成長させる羅針盤」と捉え、「人との繋がりを深めたり、自分を成長させたりする大切なツールとして、よりよい使い方を模索していきたい」と決意します。審査員は「イギリスでの体験で得たお金についての学びと、それによる意識の変容が中学生らしい視点で示されている。今後の自分の生き方にも触れており、全体の流れが素晴らしい」と評価しました。

募集要項

第57回「おかねの作文」コンクール募集要項(PDF2,163KB)