入賞作品のうち一部をご紹介しています。本年は、全国の高等学校から1,936点の応募が寄せられ、審査の結果19点が入賞作品に選ばれました(特選5点、秀作4点、佳作10点)。
特選入賞者(敬称略)
金融担当大臣賞
ポイ活と寄付![](https://j-flec.go.jp/wpimages/uploads/pdf.svg)
![](http://localhost:8015/wp-content/uploads/2024/07/pdf.svg)
今村 茉奈(京都府 同志社女子高等学校 3年)
日本銀行総裁賞
「私の投資物語」![](https://j-flec.go.jp/wpimages/uploads/pdf.svg)
高橋 くらら(新潟県 新潟県立新潟高等学校 2年)
秀作入賞者(敬称略)
水槽を満たすお金![](https://j-flec.go.jp/wpimages/uploads/pdf.svg)
松尾 奈夏(石川県 金沢大学人間社会学域学校教育学類附属高等学校 2年)
佳作入賞者(敬称略)
佳作入賞者一覧(10名)
(PDF67KB)
審査員(敬称略)
松島 斉 | 東京大学大学院経済学研究科教授 |
山田 真哉 | 公認会計士・税理士 |
沖山 栄一 | 全国公民科・社会科教育研究会会長 |
阿部 睦子 | 全国家庭科教育協会理事長 |
岩澤 未奈 | 東京都立狛江高等学校主任教諭 |
西 祐貴子 | 筑波大学附属高等学校教諭 |
塙 枝里子 | 東京都立農業高等学校主幹教諭 |
村上 悠介 | 金融庁総合政策局総合政策課 金融経済教育推進室課長補佐 |
西澤 美彦 | 文部科学省初等中等教育局視学官 |
小牧 義弘 | 日本銀行情報サービス局長 |
大友 佳子 | 金融経済教育推進機構理事 |
講評
第22回「金融と経済を考える」高校生小論文コンクールには、1,936編の応募がありました。金融や経済に関することであればテーマは自由です。厳正な審査の結果、特選5編、秀作4編、佳作10編の入賞作品が決まりました。
データや実例の分析をもとに地域や社会への提言をつづった作品から、投資の考え方を生活や将来設計に取り入れて考察を深めた作品まで、多彩なテーマの力作が集まりました。特選5編の概要を紹介します。
金融担当大臣賞「ポイ活と寄付」の筆者は、ハンバーガー店でチーズバーガーセットを購入した際、売り上げの一部が寄付される仕組みの存在を知ります。街頭募金に参加する心理的ハードルの高さや、キャッシュレス化により現金での募金機会が減少していることに考えを巡らせていたとき、母から、生命保険の契約でたまったポイントをユニセフに寄付しているという話を聞きます。ポイントによる寄付の現状を調べてみると、手続きの手軽さや効率性といった特徴、発展途上国や災害支援、NPOなど多様な寄付先の選択肢があることがわかりました。こうした寄付方法について筆者は、企業にとってはイメージアップにつながり、消費者は寄付という社会貢献の満足感を得ることができ、寄付を募る側はポイントカード利用者の幅広い層にアプローチが可能になると分析。「ポイ活による寄付行動が、社会全体に良い循環をもたらし、ますます普及していく」と結論づけます。審査員からは「『ポイ活』が寄付という行動をどう変えていくかを筆者の身近な体験などを基に考察し、わかりやすく論じられている」と評価されました。
文部科学大臣賞「地域経済を発展させるためのベストな戦略」の筆者の地元である岐阜県関市は、世界三大刃物産地として知られる伝統産業が盛んな地域ですが、近年、人口減少と少子高齢化が深刻な課題となっています。特に刃物産業の担い手不足が問題で、観光資源としての価値低下も懸念されます。筆者は若者に地元への定着を促すことが必要と考え、小さな子どもには刃物づくりの体験学習で地元に愛着を持つきっかけを作り、中高校生には、商店街に自習室を設置し街に足を運ぶ機会を増やすといった年代別のアプローチを提言します。また最近地元にできた施設「ひねもすぽっと」の認知度が低いことに着目し、人を集めて交流を生むための新たな宣伝方法やSNSの活用を訴えます。地元の人々が自分の街に足を運ぶことが地域経済の発展につながり、「関市に居続けたいと思う人が増えれば、必ず関市に明るい未来が訪れる」と結びます。審査員からは「地域課題を自分ごと化している点がよい。自らの経験を踏まえた解決策の提案も高校生らしく具体的で今後が期待できる」と評価されました。
日本銀行総裁賞「『私の投資物語』」の筆者は、投資を長年続けている祖母の話を聞き、小学生の頃から投資に興味を持っていました。中学生になり、月に数万円かけて塾に通うよりも、もっとお金を有効に使う方法があると考えた筆者は、「私に投資してほしい」と提案。勉強やボランティア、習い事のスポーツも含めた心身の学びに関する詳細な計画書を作り母にプレゼンします。参考書の購入にはコンクールで得た副賞を活用し、空手は安価な市民体育館を利用するなどして算出した投資額は「月1万円」。高校生になった現在も計画は順調に続いており、筆者は投資してもらったことへの責任感や自身の成長を実感しています。また、投資される存在の企業と自分の姿を重ね、時間をかけて成長を見守る過程に投資と子育てとの共通点を見出します。母が幼い頃に苦しんだ病気の治療薬を開発する企業へ今も投資を続ける祖母や、いつも筆者の背中を押してくれる母のように、自分も誰かの支えとなるようなお金の使い方を目指したいという決意をつづっています。審査員からは「自分の成長に投資してもらうという着眼点が面白い。家族の愛情が感じられ、生き生きとした文章で好感を持てた」と評価されました。
全国公民科・社会科教育研究会会長賞「祖父から学んだ投資の知恵」は、筆者が祖父から受け継いだ価値観を実践する様子が描かれています。投資に精通している祖父から経済に関する知識を学んでいた筆者は、高校に入学して最初の試験勉強で壁にぶつかったとき、「信じて待つことが大切だよ」という祖父の言葉を思い出し、乗り越えることができました。この経験から筆者は日々の生活にも祖父の教えを取り入れ、友人関係や勉強、将来への不安などに直面しても、焦らず信じて歩み続けることで自分に合った道が開けることを実感します。また「長期的視野に立つ」という祖父の教えが、目先の利益やスピードにとらわれがちな現代にも普遍的な価値を持ち、社会課題解決に役立つ考え方であると述べています。最後は「この教えを胸に刻み、自分のペースで歩みながら、持続可能な未来を見据えた生き方を貫いていきたいと」と結びます。審査員からは「投資の本質を突いており、広く読んでほしい作品。社会に役立つ視点を持っているところも素晴らしい」と評価されました。
J-FLEC理事長賞「リスクヘッジからリスクテイクする時代へ」の筆者は、起業家としての成功を将来の目標に掲げています。10代前半を過ごしたベトナムで「リスクはチャンスの証」と学んだ筆者は、「リスクテイク」の精神を大切にしています。日本で学生起業家のリスクテイクを促すために何が必要か、米国・シリコンバレーを参考に調べた筆者は、次の4点を指摘します。第1に、シリコンバレーでは失敗を経験として評価する文化があること。第2に採用における新卒優先主義が、日本の若者の挑戦を阻む要因になっていること。第3に、Googleが過去に導入した20%ルールのように、シリコンバレー企業には社員の起業を支援する仕組みが整っている点。そして第4は、起業家へ投資するファンドの数や資金の圧倒的な違い。筆者は、シリコンバレーのような考え方や制度を日本にも導入し、若者が挑戦しやすい環境を整えることが重要だと主張します。また起業家教育を充実させる重要性にも触れ、日本で多くのスタートアップが生まれる未来を実現したいと結びます。審査員は「夢の実現に向けて、リスクテイクしやすい環境づくりのあり方を調べ、失敗から学んで成功体験を積むべきという結論へ導く流れが前向きで非常によかった」と評価しました。
第22回「金融と経済を考える」高校生小論文コンクールには、1,936編の応募がありました。金融や経済に関することであればテーマは自由です。厳正な審査の結果、特選5編、秀作4編、佳作10編の入賞作品が決まりました。
データや実例の分析をもとに地域や社会への提言をつづった作品から、投資の考え方を生活や将来設計に取り入れて考察を深めた作品まで、多彩なテーマの力作が集まりました。特選5編の概要を紹介します。
金融担当大臣賞「ポイ活と寄付」の筆者は、ハンバーガー店でチーズバーガーセットを購入した際、売り上げの一部が寄付される仕組みの存在を知ります。街頭募金に参加する心理的ハードルの高さや、キャッシュレス化により現金での募金機会が減少していることに考えを巡らせていたとき、母から、生命保険の契約でたまったポイントをユニセフに寄付しているという話を聞きます。ポイントによる寄付の現状を調べてみると、手続きの手軽さや効率性といった特徴、発展途上国や災害支援、NPOなど多様な寄付先の選択肢があることがわかりました。こうした寄付方法について筆者は、企業にとってはイメージアップにつながり、消費者は寄付という社会貢献の満足感を得ることができ、寄付を募る側はポイントカード利用者の幅広い層にアプローチが可能になると分析。「ポイ活による寄付行動が、社会全体に良い循環をもたらし、ますます普及していく」と結論づけます。審査員からは「『ポイ活』が寄付という行動をどう変えていくかを筆者の身近な体験などを基に考察し、わかりやすく論じられている」と評価されました。
文部科学大臣賞「地域経済を発展させるためのベストな戦略」の筆者の地元である岐阜県関市は、世界三大刃物産地として知られる伝統産業が盛んな地域ですが、近年、人口減少と少子高齢化が深刻な課題となっています。特に刃物産業の担い手不足が問題で、観光資源としての価値低下も懸念されます。筆者は若者に地元への定着を促すことが必要と考え、小さな子どもには刃物づくりの体験学習で地元に愛着を持つきっかけを作り、中高校生には、商店街に自習室を設置し街に足を運ぶ機会を増やすといった年代別のアプローチを提言します。また最近地元にできた施設「ひねもすぽっと」の認知度が低いことに着目し、人を集めて交流を生むための新たな宣伝方法やSNSの活用を訴えます。地元の人々が自分の街に足を運ぶことが地域経済の発展につながり、「関市に居続けたいと思う人が増えれば、必ず関市に明るい未来が訪れる」と結びます。審査員からは「地域課題を自分ごと化している点がよい。自らの経験を踏まえた解決策の提案も高校生らしく具体的で今後が期待できる」と評価されました。
日本銀行総裁賞「『私の投資物語』」の筆者は、投資を長年続けている祖母の話を聞き、小学生の頃から投資に興味を持っていました。中学生になり、月に数万円かけて塾に通うよりも、もっとお金を有効に使う方法があると考えた筆者は、「私に投資してほしい」と提案。勉強やボランティア、習い事のスポーツも含めた心身の学びに関する詳細な計画書を作り母にプレゼンします。参考書の購入にはコンクールで得た副賞を活用し、空手は安価な市民体育館を利用するなどして算出した投資額は「月1万円」。高校生になった現在も計画は順調に続いており、筆者は投資してもらったことへの責任感や自身の成長を実感しています。また、投資される存在の企業と自分の姿を重ね、時間をかけて成長を見守る過程に投資と子育てとの共通点を見出します。母が幼い頃に苦しんだ病気の治療薬を開発する企業へ今も投資を続ける祖母や、いつも筆者の背中を押してくれる母のように、自分も誰かの支えとなるようなお金の使い方を目指したいという決意をつづっています。審査員からは「自分の成長に投資してもらうという着眼点が面白い。家族の愛情が感じられ、生き生きとした文章で好感を持てた」と評価されました。
全国公民科・社会科教育研究会会長賞「祖父から学んだ投資の知恵」は、筆者が祖父から受け継いだ価値観を実践する様子が描かれています。投資に精通している祖父から経済に関する知識を学んでいた筆者は、高校に入学して最初の試験勉強で壁にぶつかったとき、「信じて待つことが大切だよ」という祖父の言葉を思い出し、乗り越えることができました。この経験から筆者は日々の生活にも祖父の教えを取り入れ、友人関係や勉強、将来への不安などに直面しても、焦らず信じて歩み続けることで自分に合った道が開けることを実感します。また「長期的視野に立つ」という祖父の教えが、目先の利益やスピードにとらわれがちな現代にも普遍的な価値を持ち、社会課題解決に役立つ考え方であると述べています。最後は「この教えを胸に刻み、自分のペースで歩みながら、持続可能な未来を見据えた生き方を貫いていきたいと」と結びます。審査員からは「投資の本質を突いており、広く読んでほしい作品。社会に役立つ視点を持っているところも素晴らしい」と評価されました。
J-FLEC理事長賞「リスクヘッジからリスクテイクする時代へ」の筆者は、起業家としての成功を将来の目標に掲げています。10代前半を過ごしたベトナムで「リスクはチャンスの証」と学んだ筆者は、「リスクテイク」の精神を大切にしています。日本で学生起業家のリスクテイクを促すために何が必要か、米国・シリコンバレーを参考に調べた筆者は、次の4点を指摘します。第1に、シリコンバレーでは失敗を経験として評価する文化があること。第2に採用における新卒優先主義が、日本の若者の挑戦を阻む要因になっていること。第3に、Googleが過去に導入した20%ルールのように、シリコンバレー企業には社員の起業を支援する仕組みが整っている点。そして第4は、起業家へ投資するファンドの数や資金の圧倒的な違い。筆者は、シリコンバレーのような考え方や制度を日本にも導入し、若者が挑戦しやすい環境を整えることが重要だと主張します。また起業家教育を充実させる重要性にも触れ、日本で多くのスタートアップが生まれる未来を実現したいと結びます。審査員は「夢の実現に向けて、リスクテイクしやすい環境づくりのあり方を調べ、失敗から学んで成功体験を積むべきという結論へ導く流れが前向きで非常によかった」と評価しました。
募集要項
第22回「金融と経済を考える」高校生小論文コンクール募集要項
(PDF1,885KB)